ホテルにて

 ホテルのロビーに碁盤があったので、友人と詰め碁を検討していると小学生ぐらいの男の子が遠くからこっちを見ているのに気がついた。囲碁に興味があるようで、手を引くお父さんに抵抗してこちらを観察していた。そのお父さんが言った。
「私もこの子も囲碁のルール知らないんです。」
その時、今日の出来事がきっかけになって、あの子が囲碁を始めて、いつか、きっかけはあの時だったとあの子が思い出したらなかなかいいなと思った。そして、もう少し好奇心で近づいてくるのなら教えてあげようと思った。

 ロビーには碁盤が一面しか無かったので、その子とお父さんは隣りの将棋盤で将棋崩しを始めた。僕たちの詰め碁の方はなかなか手が見つからなかった。友人も今日ルールを知ったのに近いので、まぁ仕方が無い。
 頃合いを見計らって、男の子とそのお父さんに声をかけた。友人とその男の子を六路盤で対局させ、ルールを教えた。地の計算まで終えて、男の子は楽しんでいるようだったし、そのお父さんには感謝された。なかなかいい旅行の思い出になった。